事例紹介:ミスへの過度な罪悪感を手放し、自分をコントロールする力を育てる
※この事例は、複数の相談ケースを統合・一般化したモデルケースです。クライアントのプライバシーに配慮し、特定の個人が特定されないよう構成しています。
相談のきっかけ(20代・女性)
仕事でミスを指摘されると、周囲が思っている以上に「自分がすべて悪い」「取り返しのつかないことをした」という激しい罪悪感に襲われる毎日を送っていました。そのストレスから適応障害と診断され、最終的には退職を余儀なくされました。
心療内科での投薬治療により症状は落ち着いてきましたが、「また同じ考え方の癖で苦しむのではないか」「根本的な捉え方を変えないと復職できない」という強い危機感から、認知行動療法を希望して当オフィスを訪れました。
カウンセリングの経過
当初は「自分が悪い」という自動思考が非常に強く、別の視点(適応的思考)を探そうとしても、「それは自分を甘やかしているだけではないか」というブレーキがかかり、ワークが進まない時期がありました。
そこで、自分の中にいる複数の側面を整理する「モードワーク」を導入しました。
- 状況の整理: ミスを指摘された際、自分を激しく責め立てる「批判的な声(モード)」が心の中を占拠している状態を可視化しました。
- モードの客観視: 「私が悪い」ではなく「今、自分の中に自分を責めるモードが強く現れている」と捉え直す練習を繰り返しました。
- カウンセラーとの共同作業: 一人では難しい「別の捉え方」について、カウンセラーが提示する意見をヒントに、少しずつ「健康な大人の視点」を育てていきました。
結末と現在の状況
数ヶ月のセッションを経て、ネガティブな感情が湧いた際も「あ、今はあのモードになっているな」と一歩引いて気づけるようになりました。感情に飲み込まれる前に自分でブレーキをかける、あるいは自分をなだめるスキルを習得されました。
現在は、「ミスは学習の機会である」「自分ばかりに責任があるわけではない」という新しい価値観を土台に、自分を追い詰めすぎないペースで次のステップ(復職準備)へと進んでいらっしゃいます。
カウンセラーの視点
仕事のミスに対する罪悪感は、責任感の強さの裏返しでもあります。しかし、それが「自分という人間そのものへの否定」に繋がると、適応障害などの深刻な不調を招きます。認知行動療法やモードワークを用いることで、思考の癖を「性格」として諦めるのではなく、トレーニング可能な「スキル」として扱えるようになった好事例です。



