もくじ
はじめに:カウンセリングで何が変わるのか?
「カウンセリングを受けて良くなるって、どういうことだろう?」
これは、カウンセリングを始める誰もが抱く疑問です。「問題が完全に解決すること」でしょうか? それとも「二度と悩まなくなること」でしょうか?
私たちがカウンセリングを続けてきた中で、「良くなる」ことの本質について、一つの確かなイメージがまとまってきました。それは、「人間的な成長を促し、過去の自分を懐かしさや愛おしさをもって振り返れるようになること」です。
1. 「あの時の自分」を客観視できる心の成長
私たちが考える「良くなる」こととは、悩みの渦中にいた過去の自分自身を、まるで卒業アルバムを見るような感覚で振り返られるようになることです。
これは、誰もが経験する「若い頃の自分」を振り返る感覚と非常によく似ています。
- 10代の頃の恋愛や行動を思い出し、「あの時は感情に振り回されてたな…」とちょっぴり懐かしさや恥ずかしさを感じる。
- 当時の真剣な悩みが、今の自分から見ると「なんて可愛らしいんだろう」と愛おしく思える。
カウンセリングを通じて得られる「良くなる」感覚も、これと似たような心の変化だと思っています。
以前は、当時の思考や感情が湧くと、それに飲み込まれていました。 しかし、カウンセリングを経ると、ふとした瞬間に同じ考えや感情が湧いてきても、「ああ、あの時はこの考えに振り回されていたんだなあ」と、一歩引いてしみじみと客観視できるようになるのです。
それは、「過去の自分より大人になった感覚」であり、他でもない人間的な成長を意味します。
2. カウンセリングはほんの少し成長を早送りしてくれる
本来、私たちは日常生活における様々な経験、人間関係、そして時間経過を通して、少しずつ自分自身への洞察を深め、成長していきます。これは自然な学びのプロセスです。
しかし、このプロセスは時に非常に時間がかかったり、あるいは、深い悩みのために立ち止まってしまったりすることがあります。
ここで、カウンセリングが果たす役割は、この「自然な成長」を効率よく、少し早送りで促す過程だと捉えることができます。
- 気づきと洞察の効率化: カウンセラーとの対話は、自分の考えや感情を言語化し、客観的に整理することを促します。これにより、一人では何年もかかったかもしれない自己理解や洞察を、濃密な時間の中で集中的に行うことができます。
- 安全な振り返りの場: カウンセリングルームは、過去のつらい感情や行動パターンを、非難されることなく安全に振り返ることができる場所です。この安全な環境があるからこそ、人はつまずきの原因にしっかり向き合い、乗り越える「心の力」をつけられます。
カウンセリングは、魔法のように問題を一瞬で消し去るものではありません。しかし、あなたが持つ「成長する力」を最大限に引き出し、「成熟した自分」へと至る道のりを、より明確に、よりスムーズにナビゲートする役割を担っているのです。
専門的なアプローチによる成長の「明確化」
例えば、当オフィスでも取り入れている認知行動療法(CBT)は、この成長を非常に明確な形で加速させる方法の一つです。CBTでは、「悩みに振り回されていた時の自分の思考パターンや行動パターン」を具体的に取り上げます。
「あの時、自分を苦しめていた考え(自動思考)は、現実とは少し違う見方(認知の歪み)だったかもしれない」と、自分の内側で起きていたことの仕組みを理解することで、過去の自分を「客観的なデータ」として扱えるようになります。このプロセスは、過去の行動を論理的にも腑に落とし、「もうこの考えに振り回される必要はない」という確信をもって卒業することを可能にします。
3. おわりに:変化の第一歩は「腑に落ちる」感覚から
この「若気の至り」を振り返るような成長のイメージは、多くのクライエントさんにとっても「腑に落ちる」感覚を与えてくれるようです。
もし今、あなたが悩みの渦中にいて、一歩踏み出せずにいるなら、それは新しい「人間的な成長」の機会が訪れているサインかもしれません。
カウンセリングで一緒に、過去の自分を大切にしつつも、軽やかに乗り越えていく未来を目指しませんか。