皆さんはは、普段から「これだけは絶対譲れない」と思う考えはありますか?自分の考えをしっかり持つことはとても大事なことですが、譲れないことがあまりにも多すぎると思考が硬くなって、しんどくなりやすくなります。例えば、「自分は何をしてもうまくいかないに違いない」とか、「失敗したら、自分は周りからバカにされるに違いない」といった「譲れない」考えに縛られてしまうと、気持ちに余裕がなくなっちゃいますよね。
自分の考えや行動を縛ってしまう思いこみを「不合理な信念」と呼びます。不合理な信念は、アメリカの心理学者であるアルバート・エリスによって生み出された「論理療法」の中心的概念です。思考が不合理な信念に支配されてしまうと、人は不適応を起こしやすくなると言われています。
今回は、人を不幸にしてしまう不合理な信念についてまとめ、その対策を解説していきたいと思います。
不合理な信念の4つのタイプ
・「○○でなければならない」という思いこみ
「誰にでも優しくしなければならない」、「人は常に規律を持った行動をしなければない」など、「○○でなければならない」、「○○であるべき」といった言い回しが特徴の考え方に縛られることです。人は誰しもこのような考えをどこかで持っています。この考えがすべて不適応に繋がるというわけではありません。しかし、あまりにもこの思い込みに縛られてしまうと、思考停止や硬直化を招き、人間関係の摩擦の素になってしまいます。
また、エリスの挙げた重要な思考として「人生は楽しくイージーでなければならない」という思い込みもあります。これに捉われ過ぎてしまうと、責任やプレッシャー、困難な状況を過度に恐れてしまいやすくなります。
・悲観的思考
「どうせうまくいかない」、「やるだけ無駄だ」、「失敗したらどうする」など、ものごとを常にネガティブな方向で考えてしまうことです。特に新しいことや慣れないこと、自信がないことに取り組む際に支配されやすい考え方ではないでしょうか。ある程度、リスクを鑑みた捉え方は大切かと思いますが、ネガティブな思考に捉われすぎてしまうのも考えものです。
・「我慢できない」感情に捉われる
他人の態度に我慢できない、今の職場に我慢できないなど、現状に対する不満に捉われてしまうことです。字面を追っただけでは、「辛くても我慢しろ」と言われているように感じますが、「我慢できないなら会社を辞めれば良い」と安易な判断をしがちですが、エリスが言いたいことはそれだけではありません。「我慢できないことを自分なりに頑張って我慢したのにそのことについて周囲から承認を受けられない」といった、周囲や環境への捉え方の歪みも含まれているのではと考えたのです。この背景には、承認欲求や他者に対しての「○○すべき」思考が隠れているのかもしれません。
・自己卑下的あるいは非難的な考え方
自己卑下な考えかとは、一つのミスで自分のすべてを否定してしまったり、自信を喪失してしまうことです。このような、自身の一側面にのみ焦点を当てた悲観的な考えに支配されると、少し頑張ればできそうなことも「できない」と決め込んで行動を起こせなかったり、自分ができる範囲のことだけしかしなくなったりと行動に窮屈さが生じてしまいます。
逆に、何かトラブルがあると相手を一方的に非難することも不合理な信念に含まれます。自己卑下が自分の一側面に焦点を当てていたのに対して、非難は相手の一側面だけに焦点を当てています。
この考え方は、自分あるいは他者の一部(主に悪いところ)のみを拡大・誇張してそれがすべてであると捉えてしまうことに不合理さがあります。
不合理な信念への対抗手段
ABCDE理論
エリスの提唱した論理療法の理論モデルです。
出来事(A:Acteive event)に対して、そのように解釈してしまう信念(B:Belief)が結果(C:Consequence)としての反応を生起し、信念に対して反論(D:Dispute)することで、新たな信念を作り出す効果(E:Effect)を与え、反応を変えていくというモデルです。わかりやすく言うと、「ものごとに対する状況判断の仕方は人それぞれ。考え方、捉え方によって結果は変わるから、変な捉え方をしているなと思ったらその捉え方を変えていこうぜ」と言うのを理論化したものです。ABCDE理論で言う「B(信念)」の部分が、上記に上げた不合理な信念であると、結果としての反応も不適応なものになりやすいので、今ある信念に反論して変えていきましょうということです。
ちなみに、この捉え方を変えていくためには、頭で理解するだけでは変わりません。いわゆる「アハ」体験的な納得の仕方でなければ、自分の凝り固まった信念は変えていけないのです。これはいくらかの時間が必要です。うまくいかないこともあります。しかし、大事なことは継続することです。読書で様々な知識や考えを得て閃くこともあれば、友人や家族などの何気ない一言で解消されることもあります。考え続けるだけでなく、運動や瞑想などで一度思考から離れることで閃くこともあります。
A・エリス氏は、ものごとをネガティブ側面ばかり見ていると、芋づる式にネガティブな考えや感情に支配されるので、色々な側面からものごとを捉えていくことを提唱しました。
急がば回れ。焦らず、試行錯誤しながら自分の不合理な信念に打ち勝っていきましょう。