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「なんだか気分が乗らない…」を科学する|気分を理解し、コントロールするためのヒント

「良い気分」「悪い気分」「今日はラーメンの気分」「なんだか動きたくない気分」——私たちは日常的に「気分」という言葉を気軽に使い、その移ろいやすさを感じています。良いことがあれば心が晴れやかになり、嫌なことが続けば気分が沈むのは自然なことです。

今回は、アメリカの心理学者ロバート・セイヤー氏の研究を通して、「気分」という捉えどころのないものに光を当て、それを理解し、日々の生活で上手にコントロールしていくためのヒントを探っていきましょう。

気分は「エネルギー」と「緊張」のシーソー|セイヤーの二要因モデル

セイヤー氏の研究によると、私たちの気分は主に「エネルギー」と「緊張」という二つの要因によって左右されます。

  • 落ち込んでいる時: エネルギーが低下し、心身の緊張が高まっている状態。
  • 楽しい時: エネルギーが高まり、心身の緊張が和らいでいる状態。

このように、心と体は切り離して考えることはできません。疲労が蓄積すると気分がイライラしたり、集中力が低下したりするように、身体の状態は心にダイレクトに影響を与えます。また、憂うつな時は体を動かすことさえ億劫になるように、心の状態もまた身体に影響を及ぼします。気分を理解するためには、心と体の双方が密接に影響し合っていることを知っておくことが大切です。

あなたの気分はどのタイプ?|セイヤーの4つの気分状態

セイヤー氏は、「エネルギー」と「緊張」のレベルの高低を組み合わせ、私たちの気分を大きく4つの基本的な状態に分けました。

  1. 平静-エネルギー: 気分が良く、自信に満ち溢れ、活気に満ちた楽観的な状態です。仕事や活動に最も理想的な状態で、特に午前中にこの状態になりやすいとされています。エネルギーは高く、緊張は低いのが特徴です。
  2. 平静-疲労: 一日の終わりに感じる、就寝前のリラックスした気分です。ストレスはないものの、エネルギーも低い状態です。エネルギーも緊張も低いレベルにあります。
  3. 緊張-エネルギー: 締め切りや課題に追われている時に感じる、集中力が高まっている状態です。適度な緊張感がアドレナリンの分泌を促し、心拍数の上昇や筋肉の緊張を引き起こします。一般的に、ある程度のストレスに晒されている状態と言えます。エネルギーも緊張も高いレベルです。
  4. 緊張-疲労: 疲れがピークに達した時に感じる、心身ともに疲弊した状態です。肉体的な疲労に、精神的な不安や緊張、ネガティブな思考が結びついていることが多いとされます。エネルギーは低く、緊張は高いレベルです。一般的に午後以降に陥りやすく、睡眠不足や栄養バランスの偏り、カフェインなどの刺激物の過剰摂取によって悪化する傾向があります。

一日の気分はジェットコースター?|気分のリズムを知る

私たちの心身のエネルギーは、一日の間で一定のリズムで変動します。これはサーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれ、一般的には午前中にエネルギーが上昇し、正午頃にピークを迎えます。その後、徐々に低下し、夕方に再び小さなピークを迎えた後、就寝に向けて下降していきます。

夕方から就寝前は、自然と「緊張-疲労」の状態に陥りやすいため、ネガティブな気分を感じやすくなります。夕焼けを見て何となく寂しくなったり、夜になるとネガティブな想像をしてしまったりする経験はありませんか? それは、この生体リズムによる影響かもしれません。

セイヤー氏が行った実験では、深刻な問題を抱える人が、同じ問題に対しても午前中よりも午後の方が深刻に捉える傾向があることが示されました。また、「緊張-疲労」状態の時は、時間帯に関わらず物事を悲観的に捉えやすいことも分かっています。ですから、気分が優れない時や疲れている時は、重要な決断や心配事、考え事はできるだけ避けるのが賢明と言えるでしょう。

落ち込んだ気分をリフレッシュ!|科学的に効果のある気分転換法

気分が落ち込んだり、エネルギーが低下したりした時、私たちは様々な気分転換を試みます。人と話したり、一人で考え込んだり、趣味に没頭したり、美味しいものを食べたり…。しかし、セイヤー氏の研究によると、気分を変えるのに最も効果が高いのは運動であることが明らかになりました。疲れたと感じた時でも、5分から15分程度の軽度のウォーキングは、むしろエネルギーを回復させる効果があるそうです。

また、人との触れ合いも、健全な気分調整法として推奨されています。信頼できる友人や家族と話すことは、ストレスレベルを下げ、安心感をもたらします。さらに、音楽鑑賞も、緊張を和らげ、エネルギーを高める効果があることが分かっています。

気分に悪影響を与えるもの|避けるべき習慣

セイヤー氏の研究では、特定の食べ物や生活習慣が気分にネガティブな影響を与えやすいことも示唆されています。

  • 甘い食べ物: 甘いスナック菓子は、一時的に気分を高めるものの、1〜2時間後にはエネルギーを急激に低下させ、緊張を高める傾向があります。疲れた時に甘いものを欲するのは自然なことですが、摂取は適量に留めておく方が良いでしょう。
  • 健康状態: 一般的に、健康な人はエネルギーレベルが高く、病気の状態にある人は低くなります。また、ネガティブな気分を感じている日は、ポジティブな気分の日ほど免疫システムの働きが鈍くなることも研究で示されています。
  • 睡眠不足: 慢性的な睡眠不足は、疲労感を増幅させ、イライラや気分の不安定さを招き、うつ病のリスクを高める可能性もあります。

気分と判断力|感情に左右されないために

セイヤー氏は、「緊張-疲労」状態で考え込むことの危険性と、エネルギーレベルが高い時には楽観的な見方に偏りやすいことを指摘しています。私たちの気分は、判断力に大きな影響を与える可能性があるのです。

気分が優れない時や、逆にエネルギーレベルが高い状態の時に重大な決断をしてしまうと、後々後悔するような結果を招くかもしれません。重要な判断をする際には、自分の気分の状態を客観的に認識し、感情に流されないように注意することが大切です。

仙台泉メンタルサポートオフィスからのメッセージ|気分を知り、より良い毎日を

気分は、私たちの心と体の状態を映し出す鏡のようなものです。セイヤー氏の研究を通して気分を理解し、効果的な気分転換法を実践することで、私たちはもっと主体的に自分の心の状態をコントロールし、より健康的で安定した生活を送ることができるでしょう。

もし、気分のコントロールが困難だと感じている方や、ご自身の気分のパターンについてより深く理解したいとお考えの方は、仙台泉メンタルサポートオフィスまでお気軽にご相談ください。