読むセルフケア

「健康のためには運動を」ってよく聞くけど・・・。臨床心理士が教える、メンタルに与える運動の効果と重要性

「運動が健康に良い」という話は、誰もが一度は耳にしたことがあると思います。実際、定期的な運動は高血圧や肥満の予防・改善だけでなく、がんリスクの低下や免疫力の向上にもつながるとされています。

しかし、運動のメリットはそれだけではありません。実は、運動はメンタルヘルスの維持・改善にも大きな効果を発揮するのです。

今回は、運動が心の健康にどのように役立つのか、具体的にご紹介していきます。

運動がもたらす脳内のポジティブな変化

運動を続けることで、私たちの脳内では次のような良い変化が起こります。

1.ストレスホルモンの減少

ストレスを感じたときに分泌されるアドレナリンやコルチゾール(いわゆる「ストレスホルモン」)の濃度が、運動によって低下することがわかっています。これにより、心身の緊張や不安感が和らぎやすくなります。

2.ポジティブな脳内物質の増加

運動は、幸福感やリラックス感を高める「セロトニン」「ドーパミン」「エンドルフィン」などの分泌を促します。これらは気分を前向きに整えるだけでなく、脳の神経回路の成長や修復にも関与します。

3.思考のクセを変えるための土台づくり

私たちの思考は、脳内のニューロン(神経細胞)のつながり=ネットワークで形づくられています。運動により、ニューロン同士の結びつきを強める「脳由来神経栄養因子(BDNF)」が増加し、これまでのマイナス思考パターンを少しずつ書き換えていく助けとなります。

運動は効果的なストレスマネジメント

心の不調に悩む方にとって、運動は次のようなストレス対策にもつながります。

気分転換・思考の切り替え

身体を動かすことで、ネガティブな考えから意識をそらし、気持ちのリフレッシュが期待できます。

筋肉の緊張緩和とリラックス効果

不安やストレスを感じると、身体がこわばりやすくなります。運動で筋肉がほぐれると、心もほっと落ち着きやすくなります。

不安反応の“誤学習”を修正する

不安やパニックは、身体の興奮状態(交感神経の活発化)が「危険なもの」と認識されることで悪化します。しかし、運動も交感神経を刺激しますが、運動後にはポジティブな疲労感や達成感が残ります。これにより、身体の興奮状態が必ずしも「悪いものではない」と脳が学び直すことができます。

不安回避から「行動できる自分」へ

運動習慣がつくと、交感神経が適度に刺激されるため、活動性や行動力がアップします。不安を感じても「とりあえず動いてみる」ことで、新たな成功体験が増え、安心のネットワーク(神経回路)が脳内に形成されていきます。

メンタル回復力(レジリエンス)の向上

運動を継続することで、ネガティブな感情にとらわれすぎず、早めに気持ちを立て直せる「心のしなやかさ」が養われていきます。

どんな運動が効果的?

結論から言えば、「自分が続けやすい運動」が一番です。

  • ウォーキングやストレッチなどの軽い有酸素運動
  • 筋トレやヨガなどの無酸素運動

どちらも効果があります。いきなりハードな運動を始める必要はありません。散歩や簡単な体操など、気軽に取り入れられるものから始めてみましょう。

目安の頻度

  • 軽めの運動 → できるだけ毎日、20分程度
  • 少し負荷の高い運動 → 週2〜3回、30分程度

研究では、有酸素運動は集中力や記憶力の向上に、無酸素運動は不安感やイライラの軽減に効果が期待できると示されています。

まとめ 〜心と身体を整える第一歩として〜

運動は、単なる体力づくりだけでなく、心の不調を予防・改善する強力なセルフケア方法です。メンタル面の不安が強いときほど、つい動くのが億劫になりますが、小さな一歩が大きな変化につながるかもしれません。

ぜひ、できる範囲から、無理なく運動を生活に取り入れてみてください。

最後に

「わかってはいるけれど、なかなか運動を続けられない」「気持ちが沈んでいると、どうしても体が動かない…」

そんな声もよく耳にします。特に、気分が落ち込んでいるときやストレスが強いときほど、運動を始めること自体が大きなハードルに感じてしまうものです。

仙台泉メンタルサポートオフィスでは、こうした「頭ではわかっていても行動に移せない」というお悩みに対して、無理のないステップでの行動改善を一緒に考えるサポートを行っています。

必要に応じて、ストレスに強い心と身体を育むための「認知行動療法」や「自律訓練法」などのカウンセリングもご提案できます。

「まずは自分にできることから始めてみたい」という方も、お気軽にご相談ください。