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はじめに
「やるべきことがわかっているのに取りかかれない」
「気が散って集中が続かない」
「思ったことをつい口に出してしまう」
こうした特徴をもつ人の中には、**ADHD(注意欠如・多動症)**という特性に該当する場合があります。しかし、ADHDは単に「落ち着きがない人」「不注意な人」という表面的なラベルでは語れない、発達の多様性のひとつです。
本記事では、最新の診断基準であるDSM-5-TRに基づいてADHDを解説しながら、仙台でのカウンセリング現場でよく見られる事例も交えて、「個性」と「障害」の境界をどう考えるかについてご紹介します。
DSM-5-TRに基づくADHDの最新理解
アメリカ精神医学会が発行するDSM-5-TRでは、ADHDは発達神経学的な障害として分類され、以下の2つの側面から診断されます。
- 不注意(注意欠如):注意が続かず、細かいミスや忘れ物が多い
- 多動・衝動性:落ち着きがなく、思いついたことをすぐ行動に移してしまう
これらの症状が12歳以前から存在し、学校や職場、家庭など複数の状況で困りごとが生じている場合、ADHDと診断される可能性があります。
DSM-5-TRでは、ADHDを以下の3つの型に分類しています。
- 不注意優勢型
- 多動・衝動性優勢型
- 混合型
このような分類を通じて、より細やかな支援や理解が進められるようになってきました。
日常にあらわれる「注意」「衝動」「多動」の具体例
ADHDの特性は、単なる「落ち着きのなさ」ではありません。日常生活の中で、以下のような困りごととして現れることがあります。
■ 注意欠如の例
- 授業や会議中に話を聞いていても、すぐに他のことを考え始めてしまう
- 仕事の締切を忘れたり、約束の時間をすっぽかしてしまう
- 整理整頓が苦手で、物をよく失くす
■ 衝動性の例
- 思いついたことをすぐ口に出してしまい、人間関係にひびが入る
- 考える前に行動してしまい、後から後悔することが多い
- 購入予定のなかった物を衝動買いしてしまう
■ 多動性の例
- じっと座っていられず、体を動かしたくなる
- 手や足を常に動かしていたり、貧乏ゆすりが止まらない
- 話すスピードが速く、相手の話を待てない
こうした特性は、学校や職場、家庭などの集団生活において誤解やトラブルを招きやすく、本人も「なぜ自分だけがうまくいかないのか」と自己肯定感を下げてしまうことがあります。
「個性」と「障害」の境界線とは?
ADHDに限らず、発達特性は本来「その人らしさ」としての側面を持っています。たとえば、次のようなポジティブな傾向も見られます。
- アイデアが豊富で創造的
- エネルギッシュで行動力がある
- 興味のあることには高い集中力を発揮する
では、なぜこれらの特性が「障害」として扱われるのでしょうか。
その鍵は、生活や社会活動において支障をきたしているかどうかにあります。言い換えれば、どれだけ「困りごと」が日常生活に影響しているかが判断基準となります。
ADHDの診断は、その特性が他者との関係や社会生活においてどれほどの負担や支障を生じているかによって下されます。誰しも少なからず注意のズレや衝動性を抱えているものですが、それが生活に深刻な影響を及ぼしているかどうかが重要なのです。ADHDに限らず、発達障害の診断がつくかどうかは、それが社会生活においてどれだけ支障をきたしているかが、判断の鍵になります。
この視点から考えると、ADHDかどうか以上に大切なのは、“その人に合った環境づくりや対処法が見つかっているかどうか”なのです。
自分らしく生きるためのサポートを
仙台泉メンタルサポートオフィスでは、ADHDの傾向がある方への心理検査(WAIS-ⅣやASRS)や、困りごとに合わせたカウンセリングを行っています。
「診断を受けるほどではないけれど、生きづらさを感じている」
「職場や家庭でうまくいかないことが多くてつらい」
そんな方にも、自分の特性を知ることから始めるサポートを提供しています。自分の傾向を知ることで、「自分責め」から「工夫」への第一歩が踏み出せるかもしれません。

おわりに
ADHDという言葉が一般にも浸透するようになった一方で、表面的なイメージにとらわれて、「自分は当てはまらない」と思い込んでしまう人も少なくありません。
けれど、特性は白か黒かではなく、グラデーションのようなもの。
困っていることに気づいたときが、支援や理解を受け取るタイミングです。
仙台でADHDや発達特性に関するカウンセリングをお探しの方は、ぜひご相談ください。
「特性は自分の一部であり、弱点ではない」と感じられるよう、一緒に向き合っていきましょう。