もくじ
1. フォーカシングとは?
フォーカシングは、ユージン・ジェンドリン(Eugene Gendlin)が提唱した心理療法です。クライエント中心療法で知られるカール・ロジャーズの共同研究者であったジェンドリンは、カウンセリングの成功要因を探る中で、クライエントが言葉にならない「
からだに感じられる特定の意味のある実感」に触れることの重要性を見出しました 。
2. フェルト・センス (Felt Sense)
この「からだに感じられる特定の意味のある実感」を、ジェンドリンは「
フェルト・センス」と名付けました 。これは、まだ言葉になっていない前概念的な感覚ですが、何か意味を含んでいます 。このフェルト・センスが概念化されると、「ああ、そうか」という気づきがもたらされ、
体験過程の推進 (Felt Shift) が起こります 。体験過程とは、感じられた意味が適当な言葉などで概念化され、その概念化によって感じられた意味が変化し、再び概念化されるというプロセスを指します 。
ジェンドリンとコーネルの比較
フォーカシングを学ぶ上で、創始者であるジェンドリンと、彼の弟子であるアン・ワイザー・コーネル(Ann Weiser Cornell)の理論と技法の違いも把握しておきましょう。
1. Gendlin のフォーカシング
ジェンドリンはフォーカシングを促すための
6つのステップを提唱しました 。
- クリアリング・ア・スペース (Clearing a Space) :心の中にある気がかりなことを一つずつ思い浮かべ、それを自分が安心できる場所に「置いていく」手法です。心の中に空間を作り、自分の気がかりについてからだで感じていく力を生み出します 。
- フェルト・センス :からだの中心部に注意を向け、気がかりなことに対する「感じられた実感」を探します 。
- 取っ手(ハンドル) を手に入れる :フェルト・センスに言葉やイメージなどの象徴をつけます 。
- 共鳴させる :つけたハンドルとフェルト・センスが一致しているか、からだの感覚と照らし合わせます 。
- 尋ねる :フェルト・センスに対し「何が一番気になるのか?」などと問いかけます 。
- 受け取る :答えを無理に探さず、出てきたものをそのまま受け止めます 。
- 「内なる批評家」への向き合い方
- ジェンドリンは、内なる批評家を「超自我」と呼び、敬意を払わず断固拒絶するようにと述べています 。
- これは、直接向き合うのではなく、迂回することを主な提言としています 。
2. Cornell のフォーカシング
コーネルは、ジェンドリンに師事しながらも、自身の体験からフォーカシングをより優しく教える方法を工夫しました 。彼女の方法は「
内的関係によるフォーカシング (Inner Relationship Focusing; IRF)」と呼ばれ、フェルト・センスを擬人化して関係を築くことを目指す点が特徴です 。彼女は
5つのステップを提唱しました 。
- からだの内側に注意を向ける :まずからだの内側に注意を向け、楽に座っているか、からだの中で楽な感じがするのはどこかなどを確かめます 。気がかりなことが出てきたら、その感じに挨拶をして「こんにちは。そこにいるのが分かったよ」と伝えます 。これは、問題との距離を「認めること」でスペースを見つけるプロセスを確立したものです 。
- フェルト・センスを見つける、あるいは招く :からだの中で感じられるフェルト・センスを見つけたり、自分へと招いたりします。
- 取っ手(ハンドル) を手に入れる :フェルト・センスに言葉やイメージを与えます。
- 一緒にいる :見つけたフェルト・センスをありのままに認め、そのそばに静かに佇みます 。
- 終わりにする :セッションを終える準備ができたときに、プロセスを閉じます。
- 「内なる批評家」への向き合い方
- コーネルは、内なる批評家を**「愛され受容されることから切り離されてきた、癒されていない一部分」**と捉え、同情を持って耳を傾けることを提唱しました 。
- 彼女は、批評家も私たちを助けようとする保護者的な側面を持っていると考え、その存在を否定するのではなく、プロセスに含めるべきだと主張します 。この考え方は、「すべてあるがままに (The Radical Acceptance of Everything)」という概念に基づいています 。
まとめ
フォーカシングは、単なる技法ではなく、クライエント自身の自己治癒力を引き出すための強力なアプローチです。このブログが、皆さんの試験対策の一助となれば幸いです。頑張ってください!