法律・倫理

心理職のコンピテンシー|公認心理師・臨床心理士試験対策

はじめに

今回は、E. Rodolfaの心理職の「コンピテンシー」について、試験対策に役立つよう、わかりやすく解説します。

コンピテンシーとは、職務や役割において高い成果を出すために必要な行動特性のことです。心理職のコンピテンシーは、単なる知識や技術だけでなく、専門家としての態度や倫理観など、多岐にわたる能力を包括的に示しています。

特に、公認心理師試験では繰り返し出題されている分野なので、必ず押さえておきたいところです。

1. コンピテンシーの3つの主要な軸

心理職のコンピテンシーは、以下の3つの軸で構成されています。

  1. 基盤コンピテンシー(Foundational Competencies): すべての心理職に共通して求められる基本的な能力です。専門家としての土台となる部分です。
  2. 機能コンピテンシー(Functional Competencies): 専門分野で発揮される特定の技能や知識です。アセスメントや介入など、具体的な業務に関わる能力を指します。
  3. 職業的発達(Professional Development): 専門家として継続的に成長していくための姿勢や段階を示します。

2. 基盤コンピテンシー:プロフェッショナルとしての土台

心理職に共通して求められる7つの基盤コンピテンシー(E. Rodolfaらが提唱)を解説します。

  • 専門家としての姿勢(Professionalism): 心理職としての価値観や倫理規定に基づいた言動ができる能力です。守秘義務の遵守や、クライエントの尊厳を尊重する姿勢が含まれます。
  • 反省的実践(Reflective Practice): 自身の言動や判断を客観的に振り返り、自己評価を行う能力です。自己の言動がクライエントや他者に与える影響を認識することが含まれます。
  • 科学的知識と方法(Scientific Knowledge and Methods): 科学的な研究から得られたエビデンスを尊重し、それを効果的に臨床に応用できる能力です。
  • 関係形成(Relational Competencies): 個人、グループ、地域社会など、多様な人々や集団と効果的で意味のある関係を築く能力です。
  • 文化的ダイバーシティ(Cultural Diversity): 異なる文化的背景や価値観を持つ個人・集団に対して敏感であり、適切に配慮できる能力です。
  • 他職種協働(Interdisciplinary Systems): 医師やソーシャルワーカーなど、他の専門家と円滑に連携し、チームとしてクライエントを支援できる能力です。
  • 倫理・法的基準と政策(Ethical & Legal Standards): 倫理綱領や関連法規の知識を、個々のケースや集団に適用できる能力です。

3. 機能コンピテンシー:専門的な技能

機能コンピテンシーは、心理職が専門的な業務を遂行するために必要な技能を指します。

  • 心理的アセスメント: クライエントの状態を正確に把握するための客観的なアセスメント(心理検査など)を実施し、解釈する能力です。
  • 介入: クライエントの特性や問題に適した介入計画を立て、知識とスキルを活かして実施し、その効果を評価する能力です。
  • スーパービジョン・教育: 専門的な知識やスキルを教えたり、指導を受けたりする能力です。
  • 研究と評価: 心理学的な研究とその方法を理解し、その知見を実践に応用したり、自身の介入効果を評価したりする能力です。
  • 管理・運営: メンタルヘルスサービスや事業の管理・組織運営に関わる能力です。
  • コンサルテーション: 他の専門家や組織からの相談に対し、専門家としての助言や支援を提供する能力です。
  • アドボカシー: 個人や集団の権利・利益を擁護し、社会・政治・経済・文化的に影響を与えることで、システムの変化を促進する能力です。

4. 職業的発達:継続的な成長

職業的発達は、心理職としての訓練や実践のレベルを示すものです。

  • 博士課程での教育や研修
  • 博士課程修了後のスーパービジョン
  • 就職後の継続的な研修や自己研鑽

これらの段階を経て、心理職はコンピテンシーを継続的に高めていきます。

まとめ

心理職のコンピテンシーは、単一の能力ではなく、**「基盤」「機能」「職業的発達」**という3つの軸で構成される包括的なものです。これらを深く理解し、自身の行動特性として身につけることが、プロフェッショナルとしての成長につながります。

試験対策としては、それぞれのコンピテンシーの内容を正確に暗記するだけでなく、**「実際の臨床場面でどのように活用されるか」**をイメージしながら学習を進めることが重要です。