心理査定

発達障害スクリーニング検査まとめ【公認心理師/臨床心理士試験対策】

WAIS-IVやWISC-IVといった心理検査と並び、公認心理師・臨床心理士試験において、発達障害(神経発達症)のスクリーニング検査に関する知識は必須です。

本記事では、特に頻出の自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如・多動症(ADHD)を中心とした主要なスクリーニング検査を、目的、対象、特徴ごとに整理し、効率的な試験対策をサポートします。

1.自閉スペクトラム症(ASD)関連検査

ASDのスクリーニングは「早期発見」と「生涯を通じた症状の把握」の2つの視点から行われます。

検査名対象年齢特徴・評価対象
M-CHAT16〜30か月【早期スクリーニング】 保護者記入式。言葉、非言語コミュニケーション、遊びなど23項目構成で、ASDリスクの超早期発見を目的とする。
PARS-TR幼児〜成人(3歳以上)【発達歴と現在の症状】 半構造化面接法。発達初期と現在の症状の両方を評価可能。発達歴の確認に非常に有用。
AQ-J・成人(16歳〜) ・児童(6歳〜15歳)【自記式/他者記入式】 自記式(成人)または保護者記入(児童)。社会的スキル、注意転導、想像力、コミュニケーション、細部への関心という5つの下位尺度で構成され、ASD傾向を多角的に評価。
ADOS-212ヶ月以上【行動観察のゴールドスタンダード】 検査用具や質問項目、行動観察を用いて、**「今ここでの」**ASDの症状を評価。モジュール化されており、年齢・言語レベルに応じて使い分ける。

【対策ポイント】

  • M-CHATは「1歳半健診前後」の乳幼児PARS-TRは「発達歴の聴取」で、ADOS-2は「行動観察による診断の補助」で使われる、という役割の違いを明確に。
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2.注意欠如・多動症(ADHD)関連検査

ADHDのスクリーニングは、家庭および学校での症状の**「頻度」と「重症度」**を把握することが中心です。

検査名対象年齢特徴・評価対象
ADHD-RS5〜17歳【DSM-5準拠の頻度評価】 教師版・保護者版あり。DSM-5の診断基準に基づいた18問で構成され、不注意・多動性/衝動性の症状の頻度を評価する。最も広く使われるスクリーニングツール。
CAARS成人(18歳〜)【成人ADHDの多角的評価】 自記式と他者評定式。成人のADHD傾向を、不注意・衝動性・多動性など多角的な側面から評価する。
Conners 36歳〜18歳【児童のADHDの包括評価】 保護者版、教師版あり。ADHD症状に加え、実行機能や攻撃性、不安などの関連問題も包括的に評価できる。

【対策ポイント】

  • ADHD-RSはDSMの症状基準に最も近く、症状頻度の確認に特化。
  • CAARS成人向け、Conners 3はADHD症状に加え併存症もチェックできる包括性が特徴。
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【公認心理師/臨床心理士試験対策】ADHD(注意欠如多動症)の特性、診断基準、原因を解説公認心理師・臨床心理士を目指す方へ。ADHDの主要な特性(不注意・多動性・衝動性)とDSM-5-TRの診断基準、脳内のドパミン・ノルアドレナリンとの関連、成人期での現れ方を試験対策の視点から解説します。...

3.広汎な行動・情緒の問題のスクリーニング

特定の診断に特化せず、発達障害に併存しやすい情緒面・行動面の問題を広く捉える検査です。

検査名対象年齢特徴・評価対象
CBCL4歳半〜18歳【包括的な問題評価】 養育者記入式。子どもの広汎な情緒と行動の問題(内向性、不安/抑うつ、攻撃性など)を包括的に評価する。発達障害を持つ子どもの二次障害併存症のスクリーニングに有用。

💡 試験対策:スクリーニング検査の役割を理解する

スクリーニング検査は、「診断の確定」ではなく、「対象となる障害の可能性を評価し、精密検査の必要性を判断する」ための予備的なツールです。

  • 一次スクリーニング: M-CHAT、ADHD-RSなど、簡便な質問紙で行い、ハイリスク群を抽出する。
  • 二次スクリーニング: PARS-TRやAQ-J、CBCLなど、より詳細な評価を行い、支援や精密検査への移行を検討する。

心理職として、これらの検査の限界(例:単独では診断できない)を理解し、面接、観察、他の心理検査(WISC/WAIS、感覚統合など)と統合的に解釈する能力が求められます。

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