基礎心理学

マズローの欲求階層説とは

 マズローは、人は生まれながらに自己実現欲求を持ち、人が成しえる最重要事項であると自己実現とは何か?マズローの基本的な考え方

アブラハム・マズロー(Abraham Maslow)は、人間には生まれながらにして自己実現欲求が備わっており、それこそが人間が成し得る最も重要な目標であると考えました。

ただし、この自己実現欲求を達成するためには、まずは生理的欲求や安全欲求、自己肯定感などの基本的な欲求が先に満たされている必要があるとしました。

たとえば、「プロのサッカー選手になりたい」という自己実現欲求を持つ人がいたとしても、練習を続けるための食事(生理的欲求)が取れなかったり、住む場所や収入(安全の欲求)がなかったりすれば、その目標の実現は難しくなります。

さらに、サッカーの練習は一人ではできません。仲間とともにチームに所属し(所属の欲求)、実力を認められてレギュラーとして試合に出場し、さらにはプロのスカウトに見出される(承認の欲求)ことが、自己実現に向けたプロセスになるのです。

欲求は必ずしも「順番通り」に満たされるわけではない

マズローは、自ら提唱した階層構造について「必ずしもこの順番通りに進むとは限らない」とも述べています。

中には、「お金のことは後回しにして練習に打ち込む人」もいるでしょう。つまり、個人の価値観や状況により、欲求の優先順位には違いがあるということです。

マズローの5段階欲求階層を具体的に解説

ここからは、マズローの5段階の欲求階層を順に解説していきます。

1. 生理的欲求

人間が生きるために必要な、最も基本的な欲求です。

  • 食事
  • 水分補給
  • 呼吸
  • 睡眠
  • 住居や衣服

これらが満たされていない状態では、より高次の欲求に目を向けることは難しくなります。

2. 安全の欲求

生理的欲求がある程度満たされると、人は次に安全で安定した生活を求めるようになります。

  • 経済的安定(収入や雇用)
  • 健康の維持
  • 事故や犯罪の防止
  • 住環境の安定

このレベルの欲求は、特に「基本的生活の保障」に関わります。

3. 所属と愛の欲求

ここからは社会的欲求の段階に入ります。

  • 家族との関係
  • 友人・恋人とのつながり
  • コミュニティや趣味のグループへの参加

所属欲求が満たされないと、孤独感・不安感が強まり、メンタルヘルスにも影響が出る可能性があります。

4. 承認の欲求

他者から認められたいという欲求であり、以下のような行動につながります。

  • 感謝されたい、尊敬されたい
  • 実績を評価されたい
  • 自分の能力を示したい

これらの欲求が満たされることで、自己肯定感や自信が育まれる一方、満たされないと劣等感を抱くようになります。

5. 自己実現の欲求

マズローの欲求階層の最上位に位置するのが、自己実現欲求です。

これは、その人の能力・才能・可能性を最大限に活かし、人生を通じて成長し続けるという欲求です。

▶ 自己実現に必要な行動とは?

マズローは、自己実現に至る人の特徴を次のように整理しています:

  • 恥も外聞も忘れて何かに打ち込む
  • 成長か退行かを選ぶ覚悟をもつ
  • 自分の思考・感情に責任を持ち、正直に生きる
  • 嫌なことは「嫌だ」と言う勇気をもつ
  • 意欲的に働き、能力を最大限に発揮する
  • あらゆる仕事で「最高のレベル」を目指す
  • 自分の心理的防衛を見極め、克服しようとする
  • 他者の長所を見つけて尊重する
マズローの欲求階層の画像

マズロー理論の影響と意義

マズローの理論は、心理学において新たなパラダイムの転換点となりました。

彼以前の心理学は主に2つの潮流に分かれていました:

  • 行動主義:客観的に観察できる行動のみを重視
  • 精神分析:フロイトの影響を受けた病理的側面の重視

これらはどちらも「異常心理」や「病理」に注目していましたが、マズローは人間の健康で前向きな側面に光を当てました。

この発想が、のちに「人間性心理学(ヒューマニスティック心理学)」という新しい分野を生み出し、現在のカウンセリングや教育心理学などにも大きな影響を与えています。

まとめ|大学院入試・資格試験でも頻出の重要理論

マズローの欲求階層説は、公認心理師試験や臨床心理士試験、大学院入試でも頻出の重要理論です。

人間の行動や動機づけを理解するうえで基本となるこの理論は、ただ暗記するだけでなく、具体的な事例や実生活への応用を意識して学ぶことが合格への近道になります。