心理学

やり過ぎ注意!?:ストレスからこころを守る防衛機制

SAIKORO

今回は自己理解を深めるために防衛機制について解説していきます。

クロ

防衛機制を理解することで、ストレス対処法を振り返ったり深めることができるぞ。

防衛機制とは? 

 人は常に不快な感情や記憶、衝動を持っています。防衛機制とは、このようなこころの不快なものに対処していくための無意識の心理反応です。防衛機制という用語は、精神分析から生まれたものです。精神分析の創始者であるフロイトによれば、防衛機制は、不安からこころを守るために発達した自我の手段です。防衛機制は、不適切で望ましくない思考や衝動を意識的な心に入ってこさせないようにしていると考えられています。

防衛機制はいかに作用するか

 フロイトのパーソナリティモデルにおいて、自我は現実に対処するパーソナリティの側面とされています。その一方で、自我は、イドや超自我の対立する要求にも対処していかなければなりません。

イドとは、すべての欲望やニーズ、衝動を満たそうとするパーソナリティの側面です。基本的に快楽に則り、苦痛を避けていこうとします。

 超自我とは、理想やモラル、マナーの下で行動することを自我に求めようとするパーソナリティの側面です。超自我は、我々が両親や家族、社会規範から取り入れられたモラルや価値観から成り立っています。

 防衛機制とは、イドと超自我と現実との葛藤から自我を守るために働くとされています。例えば、仕事で残業を強いられることがあったとします(現実)。この時、イドは残業の苦痛を避けたいと自我に働きかけます。一方、超自我はイドの欲求とは反対に、モラルや社会規範を全うしようとするので、残業するように自我に働きかけます。相容れない欲求に挟まれた自我には、葛藤が生まれます。そこで、この葛藤を解消するために利用されるのが防衛機制です。

防衛機制の種類

1.抑圧

 抑圧とは、受け入れがたい欲求や感情を意識の外に押しやることです。しかし、その欲求や感情は無くなるわけではなく、私たちの行動の端々に影響し続けます。上記の残業の例でいえば、イドの欲求を無意識に抑圧することで葛藤を解消します。しかし、残業をしたくない気持ちは無くなったわけではなく、イドの欲求は解消されないまま無意識に残ります。この気持ちを抑圧し続けて残業ばかりしていると、いずれ心身に不調をきたしたりします。

2.置き換え

 欲求や感情を本来向けるべき対象とは別のものに向けることを言います。置き換えは、イライラや怒りといった感情との関連が強いです。残業を言い渡してくる上司には少なからずイライラすると思います。しかし、ここで直接上司にイライラをぶつけてしまえば、自分にとって不都合になる可能性が高い。そのため、家に帰って家族にあたるといった行動を引き起こします。家族にイライラをぶつける方が、不都合になる可能性は低いからです。

3.合理化

 満たすことのできない欲求に対して、論理的に考えることで納得しようとすることです。合理化の例はイソップ物語の「すっぱいブドウ」で良く例えられます。キツネがおいしそうなブドウの木を見つけましたが、背が届かず食べることができません。そのため、キツネは「あのブドウの酸っぱくて食べれたものではない」と言い聞かせるという話です。端的に言うと、合理化は、何かと理由を付けて言い訳を並べることと言えるでしょう。

4.知性化

 何らかの受け入れがたい出来事について知識を集めて処理しようとすることです。この防衛機制は、知性的な要素にのみ焦点を当てることで、ストレスフルで感情的な状況の側面について考えることを避けることができます。例えば、不治の病と診断された人は、苦難から避けるために病気について常に学ぶことに集中し、現実の状況から距離を取り続けるなどがあげられます。

5.投影

 自分の欲求や感情を自分が持っているのではなく、相手が持っていると考えることです。例えば、あなたが誰かに強い嫌悪感を持つ場合、「向こうの方が自分を嫌っている」と考えることです。投影の場合、自分の嫌悪感は意識されません。投影は、簡単に言うと思い込みに近いものです。例のような投影が不特定多数の人に向けられると、「自分は人に嫌われている」と勝手に思い込んで過度に人目を気にしてたり、被害的に考えてしまいやすくなります。

6.反動形成

 本来の欲求や感情とは逆の行動をすることを言います。例えば、本当は嫌いな人に接するときに、それを悟られないようにするために過度に友好的な態度で接っすることを言います。反動形成は、本来の感情を隠すことが目的です。

7.補償

 自分の弱い部分を別の部分で補うことを言います。例えば、勉強が苦手な人は、それを補うために運動を頑張るかもしれません。補償は自分の弱点や弱みを自覚し、それを補うために自分の得意分野や強みを伸ばしていこうとします。

8.昇華

 そのまま表出すると社会に受け入れられない感情や衝動を、社会に受け入れらる形や価値のある形で表出することを言います。例えば、職場のイライラを会社や家族の人間にあたることで解消するのではなく、ジムに行って筋トレをしたりランニングをして発散するなどの行動です。フロイトは、昇華の防衛機制を用いれることが、人間として成熟したサインであるとしました。

 防衛機制には、上記に挙げた以外にも様々な種類があります。また、防衛機制は、同じものを過度に使い過ぎると心身に悪影響を及ぼすとされていますが、一時的に用いる上では、ストレスや自尊心を守るために有効です。自分がどの防衛をよく使っているかを自覚し使い分けることが、心身の健康を保つためにも大切なことです。

SAIKORO

皆さんはどの防衛機制をよく使っていますか?防衛機制もストレス対処法も一つのものに頼るのではなく、様々な種類を使い分けることが大切です。