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試験対策用語説明-記憶Part2-

SAIKORO

公認心理師及び臨床心理士試験、臨床心理士指定大学院受験を目指す人のための用語説明コーナーです。今回は記憶について解説Part2になります。

系列位置効果

 情報を与えられた際に、最初と最後は覚えていても中間の内容は忘れやすい現象のことをいいます。最初の情報を覚えやすいことを初頭効果、最後の情報を覚えやすいことを親近性効果といいます。

 このよう効果は、短期記憶や長期記憶といった記憶の多重モデルとの関係で説明できます。初頭効果は、リハーサルが行われやすい冒頭部分の情報が長期記憶に転送されやすく、親近性効果は情報提示直後であるため、短期記憶から想起されたものとされています。

エビングハウスの忘却曲線

 エビングハウスは、自分自身を被験者にして記憶内容が時間経過に伴って忘却される過程を調べました。エビングハウスは、再学習法で得られた記憶の間接的な保持率である節約法を算出し、横軸に時間、縦軸に節約率をプロットした忘却曲線を作成しました。この曲線では、最初の20分で急激に節約率が下降しますが、その後は一定の水準でなだらかな下降曲線になるとしています。なお、節約率とは、「記憶を覚えている割合」ではなく、「同じことを覚え直すコストが減少した割合」を指します。

 また、この実験は無意味な音節の記憶といった、覚えた事柄が相互に関連しあわない知識を前提としており、学術知識などの体系的な知識であれば、曲線も緩やかになると考えられています。

再学習法

 記憶に関する研究法の一つで、エビングハウスの記憶研究において、記憶の忘却を測定するために用いられました。一度学習した記憶リストを、一定時間後に再学習し、最初に記憶した時と比較してどのくらい学習時間や試行数に差があるかを測定する方法です。記憶の間接的保持率である節約率を算出するために用いられました。

再生法/再認法

 記憶痕跡について確認する方法です。再生法は、記名したものをそのまま思い出して記憶を再現する方法で、試験の穴埋めや記述問題のように、覚えたものを思い出して書き出すときに用いられます。再認法とは、目の前に提示された刺激が以前記銘したものかを判断する方法です。試験の択一問題のような提示された事柄について以前覚えていたことと一致するかどうかを判断する時に用いられます。一般的に再認法の方が学習成績が良いとされています。

処理水準モデル

 クレイクとロックハートによって提唱された記憶モデルです。ある情報に対する記憶の処理は、感覚的な浅い処理よりも、意味的に深く理解した記憶の方が保持に優れているとしたモデルです。

処理には3段階あり、①刺激の感覚的・物理的特性の処理、②言語的・音韻的処理、③抽象的・意味的処理に分類されます。

例えば、英単語を覚える際に、単語を音読するだけで覚えるよりも、その単語を含む例文を訳して覚えたり、語源を調べながら覚える方が、記憶に残りやすくなります。

潜在記憶/顕在記憶

 自分の意思とは関係なく、無意識に思い出してしまう記憶を潜在記憶、自分の意思で緒も出すことができる記憶を顕在記憶といいます。

 潜在記憶は、自転車に乗るといった動作の詳細を考えたり思い出さなくても無意識にできることを指します。一方、顕在記憶は、「試験問題を解くときに勉強内容を思い出す」という意識を伴う記憶のことをいいます。どちらも長期記憶の宣言的記憶と非宣言的記憶に関わる記憶です。

展望記憶

 人との約束や予定などの未来に行うことに関する記憶をいいます。逆に過去についての記憶を回想記憶といいます。

自伝的記憶

 人が人生において経験した出来事の記憶をいいます。エピソード記憶の一種とされています。

 自転的記憶は、出来事を経験した時期と想起率の関連に特徴があります。最近の出来事の想起率が高い親近性効果、0歳~5歳くらいに経験した出来事の想起率が極端に少ない幼児期健忘、10代~30代に経験した出来事の想起率が高いレミニセンス・バンプがあり、高齢者に顕著にみられます。

 また、自伝的記憶には以下の3つの機能があります。

自己機能:自己の連続性や一貫性を支えたり、過去と現在を対比させることで成長した望ましい自己像を維持すること。

社会機能:相手に自分の経験を話すことによって話の信憑性を高めたり記憶を共有することで、親密性や凝集性が高まり、対人関係を形成、維持すること。

指示機能:過去の経験が類似の状況の置ける行動や判断の決定に役立ったり、動機づけたり、価値観や態度を形成、確認すること。

フラッシュバルブ記憶

 劇的で感情を強く動かされるような社会的に重大な出来事について、それを知らされた時の状況を鮮明かつ詳細に半永久的に想起できることをいいます。ただし、鮮明に思い出せたからといってその記憶が正しいということはなく、しばしば間違った記憶として想起される場合もあります。

気分状態依存効果/気分一致効果

 ある気分の時には、過去の同じ気分のもとで記憶された内容の事柄を想起しやすい現象のことをいいます。よく似た用語として、気分一致効果というものがあります。こちらは、そのときの気分状態に一致するような情報を、記憶にとどめたり、後から思い出したりしやすい現象のことをいいます。

 気分状態依存効果の例としては、楽しい気分の時に学習した内容は、楽しい気分の時に思い出され、悲しい気分の時に学習した内容は、悲しい気分の時に思い出しやすくなるといったことです。一方、気分一致効果の例としては、楽しい気分の時には楽しい気分の記憶を、悲しい気分の時は悲しい内容の記憶を想起しやすいといった感じです。

SAIKORO

記憶の用語解説Part2でした。エビングハウスの忘却曲線や系列位置効果、気分一致効果と気分状態依存効果はごっちゃになりやすいのできちんと整理しておきましょう。