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試験対策用語説明-行動主義編-

しんりや

公認心理師及び臨床心理士試験、臨床心理士指定大学院受験を目指す人のための用語説明コーナーです。今回は行動主義編です。

行動主義とは

 行動主義はワトソンによって提唱された心理学派です。ワトソンは、心理学が科学であるためには客観的に観察可能なものでなければならないと考えており、観察可能な行動の重要性を説きました。行動主義は、S-R理論と呼ばれる「刺激と反応」関係を理論の軸としています。ワトソンはその後、「アルバート坊や」の実験から、人間の行動や情動、パーソナリティは、環境の影響によって形成されるとする環境主義提唱しました。「アルバート坊や」の実験とは、生後8カ月の男児アルバートの恐怖条件付けの実験のことです。アルバートは当初ネズミを見せても怖がるようすはありませんでしたが、それに触れると同時に耳元で大きな音が鳴らされるようになり、やがてネズミを見ただけで恐怖反応を示すようになりました。

 行動主義は20世紀前半の心理学において精神分析とゲシュタルト心理学に並ぶ三大潮流と言われています。行動主義はその後、ワトソンのS-R理論では不十分だと考えられ、新行動主義へと発展していきました。

行動主義・新行動主義の重要人物

・J.B.ワトソン:行動主義(古典的行動主義)の提唱者。「もし自分に12人の生まれたての子ども預けてくれるなら、子ども達を医者にでも芸術家にでも泥棒にでも育ててみせよう」の語録は有名

・C.L.ハル:S-R理論からS-O-R理論へと発展させた人。有機体(O)を媒介変数に加えたことで、学習効果や個人差、同一刺激に対する反応の個体差について説明可能に。動因低減説や習慣強度でも有名

・E.C.トールマン:潜在学習の提唱者。また、「学習は目的行動とその手段(サイン)との目的行動-手段の関係性によって成立する」とするサイン=ゲシュタルトを提唱。さらに、個人の持つ認知形態を認知地図と呼び、後の認知心理学に影響を与えた人

・B.F.スキナー:レスポンデント反応とオペラント反応を区別し、オペラント条件付けを重視した。徹底的行動主義の実践者

行動主義の重要キーワード

・古典的条件づけ

生理的な反射を引き起こす無条件刺激と中性的な刺激である条件刺激を対提示することで、条件刺激のみで生理的な反射と同じ反射である条件反応を形成させる一連の手続きのことを言います。レスポンデント条件付けとも言われ、パブロフの実験が有名です。ワトソンンのアルバート坊やの実験も、古典的条件づけに基づいています。

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・オペラント条件付け

 自発的な行動であるオペラント行動に対し、報酬や罰となる刺激を与えることで、行動頻度を変容させる手続きのことを言います。スキナーによって研究されました。

・動因低減説

 ハルによって提唱されました。生活体は、自らの内部にある動因によって行動が引き起こされ、動因を低減させた行動が強化に繋がるという理論です。例えば、空腹という動因は、何かを食べることで動因が低減し、「お腹が空いたらご飯を食べる」という行動の強化に繋がります。そして、ある行動に対して報酬を与えることが繰り返されることで反応が強化されていくことを習慣強度と言います。

・潜在学習

 トールマンが提唱した用語です。トールマンは迷路を用いてネズミに対して実験を行いしました。A群のネズミはゴールをすると強化子(餌)が与えられる。B群のネズミはゴールをしても強化子は与えられない。C群のネズミは、最初の5日間はゴールをしても強化子は与えられず、後半の5日間はゴールをすると強化子が与えられるように統制しました。結果、餌を与えられた群は与えられなかった群と比較してゴールまでの時間が早くなりましたが、C群のネズミは、餌が与えられる前は迷路をクリアすることが少なかったか、ゴールまで時間が掛かりましたが、餌が与えられるようになると素早くゴールする結果になったとのことです。

 この結果から、ネズミは餌が無かった為に前半はやる気がなかっただけで、実はゴールまでの進路は学習していたことになります。このような、行動に現れなくても、潜在的に内的に処理される学習を潜在学習と呼びました。

 また、トールマンは、潜在学習は、学習によって形成された心的な構造である認知地図の利用によってなされるとしています。認知地図とは、学習の際に、生体が頭の中でイメージしている空間や情報についての構造を図式化したものです。上記のネズミの迷路の例では、ネズミの頭の中では、餌の在りかまでの最短ルートが形成されていたからこそ、迷わず最速で餌の場所まで辿り着くことができたことになります。

しんりや

行動主義派の研究は後に、行動療法や応用行動分析などの実践に活用されています。この機会に、誰がどのような研究をおこなったか整理しておきましょう。