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試験対策用語説明-古典的条件づけ-

SAIKORO

公認心理師及び臨床心理士試験、臨床心理士指定大学院受験を目指す人のための用語説明コーナーです。今回は古典的条件付けについて解説していきます。

古典的条件付けとは

 ロシアのパブロフによって提唱された条件付けの理論です。レスポンデント条件付けとも呼ばれています。パブロフは犬を用いて研究でこの条件付けを解明していきました。

 犬に餌を提示すると、犬の口から唾液が分泌されます。しかし、ベルの音を聞かせても、当然ながら、犬の口からは唾液は分泌されません。次に、ベルを鳴らしてすぐに餌を提示します。犬はベルの音には反応せず、餌に反応して唾液を分泌しますが、この手続きを繰り返すことで、ベルの音を聞いただけで犬は唾液を分泌するようになります。このような手続きのことを条件付けと呼びます。

古典的条件付けにおける刺激と反射の種類

・無条件反射(UR):生体が持っている反応のこと(例:唾液)

・無条件刺激(US):無条件反射を引き起こす刺激のこと(例:食べ物)

・中性刺激:本来は背板に反応を起させない刺激。条件付けを行う対象となる刺激(例:ベルの音)

・条件刺激(CS):条件付けに基づき反応を起こす刺激。中性刺激が条件付けされると、条件刺激となる。(例:ベルの音←条件刺激)

・条件反応(CR):条件刺激に対して形成された反応。条件刺激によって生じる無条件刺激は、条件反射と呼ばれる。(例:ベルの音(条件刺激)によって唾液が出る←条件反射)

条件付けの種類

 条件刺激と無条件刺激の対呈示(一緒に提示すること)の仕方には、以下の4つのパターンがあります。

①同時条件付け:条件刺激呈示開始と同時(5秒以内)に無条件刺激を呈示。(例:ベルを鳴らして5秒以内に餌を与える)

②遅延条件付け:条件刺激呈示から5秒以上遅れて無条件刺激を呈示。(例:ベルを鳴らして5秒以上経ってから餌を与える)

③痕跡条件付け:条件刺激呈示終了後、一定時間をおいて無条件刺激を呈示。(例:ベルを鳴らし、停止してから一分後に餌を与える)

➃逆行条件付け:無条件刺激呈示終了時に条件刺激を呈示。(例:餌を与えた後にベルを鳴らす)

 実験の結果から、逆行条件付けは一般的に困難であると考えられており、①>②>③>➃の順で条件付けが容易とされています。

・味覚嫌悪条件付け(ガルシア効果)

 心理学者のガルシアが発見した条件付けです。何かを食べた後に体調不良などを経験すると、食べた物の味と体調不良が条件刺激→条件反応として結びついてしまい、その食べ物を食べなくなることです。味覚権を条件付けは、1回だけで形成されます。とても強く条件付けされるため消去がしにくく、偏食の原因にもなります。

(例:牡蠣を食べて食あたりを起こした。その後、牡蠣が食べられなくなる)

・高次条件付け

 すでに成立している条件付けに、さらに別の条件刺激を対呈示することで形成される条件付けのことをいいます。

(例:ベルを鳴らした後エサを呈示→唾液分泌(1次条件づけ)。その後、ベルと光を対呈示することによって、光でも唾液分泌が誘発されるになる)

古典的条件付けの諸現象

消去と自発的回復

 条件刺激を繰り返し呈示しても、無条件刺激が呈示されないと反応は消えていきます。これを消去と言います。しかし、消去が成された後に、休止期間経た上で、条件刺激を呈示すると条件反応が再び出現することがあります。これを自発的回復と言います。このことから、消去によって観察されなくなった条件反応は、学習が消失したのではなく、反応が抑制されているだけであることが示唆されています。

(例:ベルを鳴らしてもエサを呈示しないと唾液の分泌も無くなっていく。しかし、休止期間を経て再びベルを鳴らした後にエサを呈示すると、反応が回復する)

般化と分化

 条件刺激と類似した刺激にも条件反応が起こることを般化といいます。逆に類似した刺激に対しても異なった反応が結びつくことを分化(弁別)と言います。

 (般化の例:ベルの音を条件刺激に用いた場合、別の音色のベルを鳴らしても条件反応が起こる)

(分化の例:ベルの音でエサを与え、鈴の音など類似した音ではエサを与えないようにすると、類似した条件刺激には条件反応が起こらなくなる)

実験神経症

 パブロフが犬の実験中に発見した、弁別困難な課題によって引き起こされる神経症に似た動物の不適応行動のことをいいます。

 ベルの音を条件刺激にエサを与えるとします。この時、音を鳴らしてから大幅に間隔を空けてからエサを与えてみたり、ベルの音と共に電気ショックを与えてからエサを与えてみたり、ベルを鳴らしてもエサを与えたり与えなかったりすると、動物は学習が困難になるようです。

 このような刺激が繰り返されると、犬は自分の足に嚙みついたり、興奮するなど混乱行動が見られるようになったそうです。

SAIKORO

パブロフは、生理学や神経学の研究をしていました(生活資金を実験にすべて費やしたといわれるくらい研究熱心だったようです)。そのため、古典的条件付けは、心的過程によって起きた生理反応を研究したものになっています。現代では、漸進的筋弛緩法や系統的脱感作法といったリラクゼーションを用いた治療法に応用されています。