心理査定

ロールシャッハ・テスト-片口法-

今回は、心理検査の中でも特に有名なロールシャッハ・テスト、その中でも日本独自に発展した片口法における主要な用語や考え方について、わかりやすく解説していきます。

🔍 ロールシャッハ・テストとは?

ロールシャッハ・テストは、10枚の左右対称なインクのしみを「どのように見たか?」と分析する投映法心理検査です。無意識的な人格傾向や情緒、対人関係の在り方などを探索する目的で用いられます。

🧭 片口法とは?

日本の臨床現場で長く使用されている「片口法」は、故・片口安史氏が提唱した日本独自のロールシャッハ・テストの解釈法です。包括システムよりも自由度が高く、臨床的な直観や事例解釈を重視するのが特徴です。

📘 基本構成と主要用語

片口法では、大きく以下の構成要素に分類して反応を整理・分析します。

項目分類内容の例
反応領域W、D、Dd、S など
決定因(決定要因)F、M、C、Y、T など
反応内容H、A、At、Cg、Pl など
形態水準+、±、−、∓ など

以下に、それぞれの用語について詳しく解説します。

🗺️ 1. 反応領域(Location)

反応がどのブロット領域で生じたかを示します。

領域意味解釈
W(全体)全体反応抽象的・総合的思考。知的・高要求。
DW(作話的全体)非現実的全体反応現実検討力の低下。妄想的傾向。
Wカット切断された全体完璧主義、自己中心性。
D(普通部分)よく使われる部分現実的、具体的思考。
d(普通小部分)小さなよく使われる部分細部への注意。批判的傾向。
Dd(特殊部分)あまり使われない部分独創性。自由な発想。
dd(微小部分)ごく小さな部分些細なことへのこだわり。
S(空白)白い部分の反応反抗的、対人葛藤の反映。

🎨 2. 決定因(Determinants)

その図がそう見えた「理由」を示します。

記号意味解釈
F(形態)形で見た現実的、客観性。
M(人運動)人の動作想像力、内省性。
FM(動物運動)動物の動作衝動性、活力。
m(無生物運動)動きの感覚精神的葛藤・不安。
FC(形態+色)色つき形情緒の適切なコントロール。
CF(色+形)色優位の形情緒の不安定さ。
C(純粋色)色だけ衝動性。
C’(無彩色)黒白灰情緒の抑圧、抑うつ。
T(材質)触覚・温度愛情欲求、依存。
K(立体感)奥行き感情の客観化、自己洞察。
Y(不定形)混沌としたもの不安、混乱、抑うつ。

🧠 3. 反応内容(Content)

何に見えたか、という内容の分類。

記号内容解釈
H人間全体対人関係への関心。
(H)想像上の人物空想・願望。
Hd人の部分他者の一部へのこだわり。
A動物全体本能的、衝動的傾向。
At解剖学的身体性・心身症的傾向。
Sex性的内容性的関心、衝動。
Cg衣類自己イメージ。
Art芸術美的感受性、感性。
Pl植物自然との調和。
Ls地理・建築枠組み・秩序。

📏 4. 形態水準(Form Quality)

反応が図形とどの程度一致しているか=現実吟味力の指標。

記号片口法での意味解釈
+(優秀)明確・詳細な一致正確な認知。
±(標準)的確な説明妥当な理解。
∓(許容)一部説明が弱い想像性あり。
−(不良)一致していない認知の歪み、妄想傾向。

🧩 5. 継列分析(カードごとの意味)

図版番号特徴注目点
I最初の適応無彩色、現実的対応。
II色彩初出情緒統制を確認。
III対人関係M反応が出やすい。
IV権威の反映陰影ショック注意。
V中心的カード最も反応しやすい。
VI性・陰影抑圧された性の示唆。
VII母性イメージ依存・安心。
VIII多彩色情緒の幅広さ。
IX混乱・拒否Rej反応など。
X分散・混乱統合性を評価。

💡 ロールシャッハ片口法の魅力とは?

片口法は、様々な観点から被験者の反応を分析していくことで、その人の人となりや対人関係の在り方、葛藤状況を把握していくことができます。。

📌 まとめ

ロールシャッハ・テストの片口法では、以下のような視点からクライエントの心理状態を総合的に理解します。

  • 何をどこでどう見たか(反応領域+決定因+内容)
  • それは図とどの程度一致しているか(形態水準)
  • 各カードへの反応傾向(継列分析)
  • 全体の反応傾向(反応数や色彩バランス)

一つひとつの指標に意味があり、全体を通して人物像を描いていくのがロールシャッハの醍醐味です。