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試験対策用語説明-記憶Part1-

SAIKORO

公認心理師及び臨床心理士試験、臨床心理士指定大学院受験を目指す人のための用語説明コーナーです。今回は記憶について解説していきます。

記憶の種類

 人間の記憶システムの代表的なモデルは、アトキンソンとシフリンの二重貯蔵モデルです。当初は短期記憶と長記憶の2種類とされていましたが、後に短期記憶と感覚記憶のメカニズムを分離させ「多重貯蔵モデル」としました。

記憶の流れ

・感覚記憶

 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚といった感覚受容器から得られたすべての情報を瞬間的、一時的保持する記憶のことをいいます。感覚記憶の保持期間は1秒前後といわれています。スパーリングが実施した感覚記憶実験では、視覚刺激の記憶であるアイコニックメモリーは1秒以内、聴覚刺激の記憶であるエコーイックメモリーは数秒以内とされています。一時的に記憶された情報のうち、注意を向けられた情報のみが短期記憶に送られ、注意を向けられなかった記憶は忘却されます。

・短期記憶

 感覚記憶で意識された情報は、短期記憶に保持されます。その期間は15秒~30秒、容量は最大7±2程度(ミラーのマジカルナンバー)とされています。

 短期記憶は、情報を反復想起するリハーサルによって短期記憶内に留める維持期間を伸ばしたり長期記憶に転送されたりします。リハーサルには2種あり、維持リハーサルと精緻化リハーサルに分類されます。維持リハーサルは、反復などによって短期記憶の維持期間を伸ばすことをいいます。例えば、数字の羅列を覚えたり、電話番号を覚えるときには利用されます。精緻化リハーサルは、すでに獲得している情報や他の知識と結び付けて構造を理解することをいいます。精緻化リハーサルによって長期記憶への転送も促しやすくなります。なお、リハーサルなどの記銘処理がされなければ、記憶は忘却されます。

 近年では、短期記憶は一時的な情報の貯蔵庫としてだけでなく、会話や読書、計算などの情報処理としての側面もあることから、作動記憶(ワーキングメモリー)とも呼ばれています。

・長期記憶

 短期記憶から送られてきたもので、理論上は半永久的に上限無く蓄積される記憶のことです。短期記憶内の情報の一部がリハーサルなどの処理を受けることにより、長期記憶に転送されます。この段階に入ると、整理や検索取った記憶の操作が可能になります。情報を取り込むことを「記銘(符号化)」、保存することを「貯蔵」、記憶を呼び起こすことを「想起」と言い、長期記憶ではこの「想起」をおこなうことができます。

 長期記憶には、「宣言的記憶」と「非宣言的記憶」に分類されます。宣言的記憶とは、言葉によって蓄積されている記憶のことです。中でも、言葉の意味や数式、一般知識や常識、歴史などに関する「意味記憶」と個人的な出来事に関する「エピソード記憶」に分けられます。

 非宣言的記憶とは、言葉を使って表現できない記憶のことをいいます。何らかの運動の動作や自転車の乗り方といった身体で覚えた技術を獲得する手続き記憶と、先行する情報が後の情報に影響を及ぼすプライミングが含まれます。

・ワーキングメモリー

 短期記憶を単なる一時的貯蔵庫と捉えず、情報処理のフィールドとしての機能を重視した考え方のことです。会話や学習、計算、推理など様々な認知機能に合わせて情報処理を遂行するための記憶になります。

 バドリー(Baddeley.A.)は、視覚的・空間的情報を処理するための視空間スケッチパッド、言語的情報を処理するための音韻ループ、視空間スケッチパッドと音韻ループからの情報を統合した記憶を保持したり、長期記憶へのアクセスや統合をおこなうエピソードバッファ、これらのシステムを制御するための中央実行系からなるモデルを提唱しています。

SAIKORO

記憶関連の問題は、公認心理師や臨床心理士の試験対策だけでなく、公務員試験の心理科目でも出題頻度が高い領域です。キーワードや重要人物についてしっかり押さえておきましょう。なお、記憶関連の用語は少々文量がありますのでPart2を用意しておきます。