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試験対策用語説明-プロスペクト理論-

SAIKORO

公認心理師及び臨床心理士試験、臨床心理士指定大学院受験を目指す人のための用語説明コーナーです。今回はプロスペクト理論について解説していきます。

プロスペクト理論

トヴェルスキとカーネマンによって提唱された、不確実な状況下で意思決定を行う際に、事実と異なる認識の歪みが作用する意思決定モデルのことを言います。

まずは次の文章を読んでみてください。

「アメリカで600人の人々を死に追いやると予期される特殊はアジアの病気が突発的に発生したとします。この病気を治すために2種類の対策が提案されました。これらの対策の正確な科学的推定値は以下の通りです。あなたならどちらを採用するでしょうか。」

・パターン1

対策A:もしこの対策が採用されれば、200人が助かる

対策B:この対策を採用すれば、600人が助かる確率は3分の1で、誰も助からない確立は3分の2である。

・パターン2

対策C:もしこの対策を採用されれば、400人が死亡する

対策D:もしこの対策を採用されれば、誰もしなない確率は3分の1で、600人が死亡する確率は3分の2である。

実験の結果では、パターン1の表現方法の場合、対策Aを選択する割合が多く、パターンBの場合は対策Dを選択する割合が多いという結果になりました。

 この実験は、トヴェルスキ―とカーネマンが実施した有名な実験です。

上記の対策はすべて600人中200人が助かり400人が死亡することを表していますが、表現方法を変えるだけでかなり印象が変わってきますね。パターン1の対策はポジティブフレームと言い、利得に焦点があてられた表現です。反対に、パターン2はネガティブフレームと呼ばれ、損失に焦点を当てて表現しています。ポジティブフレーム条件では、リスク回避的な意思決定をネガティブフレーム条件では、リスク選考的な意思決定をしやすくなります。

このような、選択肢の客観的特長が全く同じでも、その問題の心理的構成の仕方によって、選択結果が異なる現象をフレーミング効果といいます。表現方法を変えるだけで、相手に与える印象が変わることを表した実験ですね。

 このようなフレーミング効果が見られる理由を説明しているのがプロスペクト理論です。プロスペクト理論は、このような利得と損失に対する意思決定の違いを「価値観数」と「確率荷重関数」の2つの観点から説明しています。

価値観数

 人間が感じる価値と客観的な価値の間には差が出やすい傾向にあります。この傾向には損失回避性が影響しています。損失回避生徒は、損をすることに対して過剰に恐怖を覚える性質のことを言います。例えば、「当たれば5万円がもらえるくじと、当たれば10万円がもらえるが外れると10万円支払うことになるくじ」のどちらを選択するかと言われれば大半の人は前者を選択すると思います。人間は得することよりも損することに過剰反応しやすいことを表しています。

確立荷重関数

 客観的確率が低い時には過大評価をし、客観的確率が高い時には過小評価をしやすい傾向にあります。例えば、宝くじの1等当選確率はかなり低いですが、「もしかしたら当たるかも」と過度な期待をしやすいでしょう。反面、「70%成功する手術」を受ける際には、「失敗したらどうしようと」不安を感じやすくなりませんか?

 このように、人は客観的な確率の通りに受け止められず、状況や希望的観測によって認識差が生まれることがあります。

 プロスペクト理論では、意思決定の過程には問題を認識し、意思決定の枠組みを決める編集段階と、その問題認識に従って代替え案の評価を行う評価段階に分かれます。編集段階は状況依存的であり、少しの言語表現の相違などによっても変化する特徴を持っているので、この段階でフレーミング効果の影響を受けやすいとされています。

SAIKORO

プロスペクト理論はノーベル経済学賞を受賞したほど、経済学や投資の世界では重要な理論として重用されています。公認心理師試験や臨床心理士試験の出題頻度は低めかもしれませんが、公務員試験では何度も出題されておりますので、チェックしておきましょう。