心理学

人の無意識とは!?精神分析の探求

SAIKORO

今回は現代の心理学に大きな影響を及ぼした精神分析について解説していきます。

クロ

「人の無意識とは何か」を生涯にわたって探求してきたジグムンド・フロイトの理論とは。そして、セラピーとしてどのような効果が有ったのかを解説していくぞ。

SAIKORO

なんかN○Kの「その○歴史は動いた」みたいな入り方だね

クロ

一度やってみたかったんだよ。

精神分析療法の概要

 精神分析療法は、人間の無意識の部分が、現在の思考や行動にどれくらい影響を与えているかについて検討していく心理療法です。セラピーの進め方としては、患者の今の生活や幼少期の体験などにについて話してもらうことが一般的です。とりわけ、幼児期の何らかの体験が、今の行動パターンを形作っていると捉え、過去への振り返りを重視する傾向にあります。このような過去の体験の振り返りや無意識的な願望の意識化などを経て、精神状態を改善していこうと試みる治療法になります。

 精神分析の基本的な視点を以下にまとめます。

・人の行動は無意識的な願望や欲求の影響を受けている

・うつや不安などの感情的、心理的な問題は意識と無意識間の対立による

・人格の発達は幼児期の出来事に大きく影響される

・人々は無意識的な欲求から身を守るために防衛を用いている

精神分析の原点

 精神分析の創始者であるフロイトは、フランスでシャルコーという催眠を用いてヒステリーを治療する人の下で研究をしていました。

 フロイトは催眠治療を続けていましたが、ある時、過去のトラウマ体験を話すことで、症状が緩和された事例に出会いました。フロイトはこれを「アンナ・Oの症例」としてまとめています。これ以後、フロイトは自分自身のことについて話すことがヒステリー治療に効果的だと考え、精神分析の治療法を確立していきました。

精神分析の進め方

 精神分析では、自由連想法といって相談者が頭に浮かんできたことをひたすら話していくように求められます。セラピストは語りの内容から、相談者の困難さの原因となっているパターンや出来事について探っていきます。精神分析家は、幼児期の出来事や無意識的な感情や思考などがメンタルヘルスの問題や不適応行動の原因になっているという理論に基づいて分析していきます。そして、そのような理論と相談者の語りを整理して、分析家の意見を「解釈」という形で相談者に伝え返し、自分自身についての洞察(自己理解)が進むように手助けしていきます。洞察が深まり、無意識的なものが意識化され言葉として発せられることで「カタルシス」経験することで、心理的な苦痛から解放されることを狙います。

意識と無意識

 フロイトが言うところの無意識とは、幼少期の記憶や隠れた欲望など、意識の外にあるものすべてのことです。無意識には、私たちが不愉快に感じているものや社会的に受け入れらないと考えられるものも含まれています。そのため、私たちは普段は、そういった不快に感じるものを無意識に押し込んでいるとされています。

 しかし、ふとした時に不快な記憶や考えが意識に上ってきて、私たちの考えや行動に影響を与えます。時には、良くない形で行動に影響を与えたり、心理的な苦痛に繋がる場合もあります。

 一方で、意識とは、私たちが気付いている思考や感情のことです。意識している内容には、簡単にアクセスすることができます。

イド、自我、超自我

 フロイトはさらに人間の心の層を3つに分類しました。それがイド、自我、超自我です。それぞれの特徴を見ていきましょう。

・イド

 人間が生まれた瞬間から存在する無意識的な精神エネルギーで、人の中にある衝動や欲求、欲望を満たすために意識に働きかけてきます。フロイトは人格を氷山に例えて説明しています。人が海の上に見えている氷山は、実は全体の一部であり、そのほとんどは海水の中に隠されています。海の上の氷山が意識、海中の氷山は無意識です。隠された氷山の大部分の中にイドは存在します。イドは本来人間が持っている隠された本能や欲望を満たそうとするだけでなく、生きるための原動力にもなります。

・自我

 イドの命令のままに従っていては、社会でやっていけません。イドをコントロールする役割に当たるのが自我です。また、後述する超自我とイドのバランスをとる調整役でもあります。自我は現実に即した考え方をし、社会的に適切な方法でイドの欲望を満たそうとします。例えば、仕事をしているときにさぼりたい気持ちや休みたい気持ちを感じることは多いと思います。しかし、殆ど人は目の前の仕事をこなそうと頑張ります。この時のさぼりたい気持ちがイドで、それをうまく調整して仕事に向き合うように仕向けているのが自我です。

・超自我

 私たちが成長していく中で取り入れていく社会の価値観や理想のことです。人は、親や学校で学ぶモラルや道徳心や、良い行動だと思うことのルールや基準といった規則に関する考えを取り入れることで、自分の中の価値観や理想を作り上げていきます。ときには、偏った価値観を取り入れてしまい、過剰な反応をしてしまうこともあります。例えば、新型コロナの流行を止めるために日本でも外出の自粛が求められました。あくまで自粛であり強制でないにもかかわらず、お店を開けている食事店に、ひどい嫌がらせをする人がいました。「皆が我慢している中で何事か!」という気持ちがあったのかもしれませんが、このような行き過ぎた正義感や倫理観は超自我の暴走と取れるかもしれません。

防衛機制

 防衛機制とは、自らを不安から守るために使う防御ツールのことです。無意識の不快な気持ちや苦痛な面が意識に上ろうとするのを防ぐために機能します。防衛機制にはさまざまな種類があり、その時々によって使い分けることが通常です。しかし、精神的な余裕がなくなると、人は自分が一番使いやすい防衛ばかりに頼るようになり、「防衛の固着化」が起こります。防衛手段が限られてくると、物ごとにうまく対処でいなくなり、不適応状態に陥りやすくなります。

精神分析の長所と短所

・長所

 精神分析は自己探索的な形態です。自分について理解していくことが、人格面、感情面の成長に繋がり、症状の緩和に役立つとされています。また、精神分析療法を受けた患者が、精神症状が改善しただけでなく、予後の経過も良好であるという研究結果を示した論文もあります。

・短所

 費用と時間があまりにも掛かり過ぎることが大きな欠点であると言えます。オーソドックスな精神分析では最低でも週1回のセラピーを求められます。フロイトの時代では、週5回のセラピーを行うことが基本とされていました。また、精神分析療法の研究結果の多くは、症例研究が多く、科学的な根拠は薄いとされています。

精神分析の現在の立ち位置

 エビデンスが不足していることもあり、現代において精神分析的な治療法を実施するセラピストは少なくなってきています。しかし、学問的意義は大きく、精神分析の治療的アプローチや理論体系が今日までの心理学史に大きな影響を与えていることは疑いの余地はありません。また、精神分析を治療法としてではなく、人間の行動理解のための理論としてとらえ直す動きもあります。

SAIKORO

今回の解説は、精神分析の創始者であるフロイトの理論に則ったものです。フロイト以後、精神分析は様々な学派に分かれて、それぞれの色で発展していきました。

クロ

イギリスでは対象関係論、アメリカでは自我心理学がそれぞれ独自に発展していったな。それぞれ学派で互いをけなし合う論争が勃発することしばしばもあったし、なかなか難しい世界のようだな。

SAIKORO

…。クロ。前から気になってたんだけど、君はどこで知識を仕入れてきてるんだい?

クロ

スマホかな。

SAIKORO

えっ?

クロ

えっ?