誰でも、傷ついたり落ち込んだりする経験はあるものです。恋人との別れ、失敗や敗北――その瞬間はつらくても、私たちは時間とともに少しずつ回復し、前を向けるようになっていきます。このように、苦しみや困難を乗り越えて回復していく力を、心理学では「レジリエンス(resilience)」と呼びます。
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レジリエンスとは何か?
レジリエンスとは、逆境や困難に直面したときに、それをはね返し、精神的に回復する力や柔軟性を指します。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。災害や事件、事故、暴力など大きなストレスを受けた後に生じる深刻な心理的反応です。PTSDには専門的な治療やケアが必要です。しかし、こうしたつらい経験がもたらすものは、マイナスの影響だけではありません。
心的外傷後成長(PTG)という可能性
PTG(Post Traumatic Growth)とは、「心的外傷後の成長」を意味する概念です。トラウマ的な経験の後に、人は以前よりも深く人生に感謝したり、他者とのつながりを強く感じたり、自分の強さに気づいたりすることがあります。PTGは、レジリエンスが発揮されることで現れるポジティブな変化とも言えます。
つまり、どのような苦悩であっても、人には乗り越える力があり、その過程で成長することも可能なのです。
レジリエンスを育む4つの方法
1.解釈を柔軟にする(リフレーミング)
レジリエンスが高い人は、出来事をネガティブに捉えすぎず、そこから意味や学びを見出す視点を持っています。
例えば、仕事でミスをしたとき、「自分はダメだ」と思うか、「この経験を次に活かそう」と思えるかで、その後の行動や感情は大きく変わります。
私たちは、自分に起こる出来事をどのように解釈するかを自分で決めることができます。困難の中にこそ、学びや成長のチャンスがあると捉えてみましょう。
2.自分でコントロールできることに集中する
楽観的な人は、レジリエンスが高い傾向にありますが、それは何も「なんとかなるさ」と盲目的に信じているわけではありません。
「ストックデールの逆説」という話をご存じでしょうか。ベトナム戦争で長期にわたり捕虜生活を送ったストックデール氏は、「未来への希望を失わずに、現実の厳しさを直視する」ことの重要性を語りました。
つまり、現実的な困難と向き合いながら、自分にできることを見極め、行動に移すことが鍵になります。大地震のときに「早く収まってほしい」と願うだけでなく、安全な場所に避難したり、備えをしたりするように、行動できることに目を向けましょう。
3.信頼できる人とつながる
レジリエンスは個人の力だけではなく、人との関係性の中でも育まれます。困ったときに頼れる相手がいるかどうかは、大きな違いになります。
子どもの研究でも、安定した大人の支援がある場合、困難を乗り越える力が高まることが分かっています。
大人にとっても同様です。一流のアスリートたちも、自分だけの力で勝ち上がってきたわけではありません。支えてくれる家族や指導者、仲間の存在があってこそ、本来の力を発揮できるのです。
普段から、信頼できる人と助け合い、つながりを大切にすることが、レジリエンスの土台になります。
4.挑戦と失敗を受け入れる
「失敗したらどうしよう」と考えて、新しいことに挑戦できないことはありませんか?
レジリエンスを高めるには、成功・失敗にとらわれず、「挑戦することそのもの」に価値を見出すことが大切です。行動に移すことで得られる経験は、自信や学びにつながります。
まずは小さなチャレンジから始めてみましょう。チャレンジする自分を認めることで、レジリエンスも着実に育っていきます。
おわりに
人は、誰でも傷ついたり、落ち込んだりしながら、それでも立ち上がって生きています。レジリエンスは特別な力ではなく、日々の心の習慣や人との関わりの中で育てていくことができます。
「傷ついても、また立ち上がれる自分」を信じて、今日できる小さなことから始めてみましょう。
もし今、ひとりで抱えていることがあるなら、どうか無理をしないでください。
あなたのペースで、あなたの言葉で、大丈夫です。
必要なときには、誰かに話してみることも「レジリエンスを育てる一歩」です。
当オフィスでは、安心できる場で、あなたのお話をじっくり伺います。
お気軽にご相談くださいね。