自尊感情(Self-Esteem)は、自己肯定感や自己価値感とも訳され、心理学、特に臨床心理学やカウンセリングにおいて非常に重要な概念です。試験では、関連する理論家や測定尺度、他の自己概念との違いが問われます。
もくじ
1. 自尊感情/自尊心 (Self-Esteem) の概要
定義
自尊感情(Self-Esteem)とは、自分自身に対して抱く全体的な価値判断や評価、感情のことです。
- 高い自尊感情:自分を肯定的に捉え、自分の価値や能力を信じられる状態。
- 低い自尊感情:自分を否定的に捉え、自己の能力や存在価値に自信を持てない状態。
これは、自分の能力(コンピテンス)と価値(ワージネス)の両側面を含む、感情的・評価的な概念です。
関連する概念との区別
| 概念 | 定義 | ニュアンス |
| 自尊感情 (Self-Esteem) | 自分に対する全体的・感情的な価値評価 | 私は価値ある人間だと感じる(感情)。 |
| 自己効力感 (Self-Efficacy) | 特定の状況で「自分ならできる」という能力の遂行に対する信念 | 私はこのタスクをやり遂げられる(能力)。 |
| 自己概念 (Self-Concept) | 自分自身に関する客観的な記述や事実の総体 | 私は〇〇歳で、〇〇という職業である(記述)。 |
2. 主要な理論家と研究
自尊感情の研究に大きな影響を与えた人物と概念を整理します。
① ウィリアム・ジェームズ (William James)
自尊感情を数式で表した古典的な理論家です。
自尊感情 = 成功 ÷ 願望
- 成功(Success):現実に達成したこと、能力。
- 願望(Pretensions):達成したいこと、理想水準。
ジェームズによれば、自尊感情を高めるには、成功を増やすか、願望を減らす(高すぎる理想を現実的に調整する)かの二つの方法があります。
② スタンリー・コッパーマン (Stanley Coopersmith)
自尊感情に関する実証研究のパイオニアであり、「自尊感情尺度の開発者」として知られます。
- 提唱: 自尊感情は、主に親の養育態度(特に受容、明確な境界設定、敬意を持った接し方)によって形成されると主張しました。
- 尺度: Coopersmith Self-Esteem Inventory (SEI) を開発し、自尊感情を測定しました。
③ カーク・ブラウン (Kirk Brown)
自尊感情を「肯定的自己評価」として捉え、自尊感情には「明確な意識的側面」と「無意識的な側面」があることを示しました。
3. 関連概念の詳細解説
① 肯定的自己評価 (Positive Self-Evaluation)
自尊感情は、この「肯定的自己評価」に他なりません。
- 定義: 自分の長所、才能、過去の成功体験、存在そのものに対して価値を認め、好意的に評価する認知的なプロセス。
- 機能: 肯定的自己評価は、心理的な緩衝材として機能します。失敗や困難に直面した際でも、「自分には価値がある」という確信が揺るがないため、立ち直り(レジリエンス)を促進します。
② コンピテンス (Competence)
コンピテンスとは、特定の状況や課題を効果的に処理・遂行できる能力、または「有能感」のことです。
- 定義: 「私は〜ができる」「私は〜に成功した」という、能力や熟達度に関する認識。
- 自尊感情との関係: コンピテンスは、自尊感情を形成する主要な要素の一つです。ジェームズの式における「成功」の側面に関連します。
- 高いコンピテンス → 高い自尊感情に繋がりやすい。
- ただし、単なる能力だけでなく、自分が価値を置く領域でのコンピテンスが特に重要です(例:社交性、学業、スポーツなど)。
4. 臨床における自尊感情の重要性(試験対策)
公認心理師・臨床心理士の試験では、自尊感情が低下した状態が様々な精神疾患や問題行動と関連付けられて問われます。
- うつ病: 低い自尊感情は、うつ病の中核症状(自己否定、無価値感)と密接に関連しています。
- 摂食障害: 身体像に対する低い自尊感情や自己評価の歪みが、発症や維持に強く関与します。
- パーソナリティ障害: 特に境界性パーソナリティ障害(BPD)では、不安定な自尊感情が対人関係の不安定さにつながります。
- 治療的アプローチ:
- 認知行動療法 (CBT):認知再構成を通じて、自己批判的な思考を修正し、肯定的自己評価を高める。
- ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー):自己受容(アクセプタンス)を通じて、低い自尊感情を克服しようとする「努力」を手放し、自己価値を肯定する。
- ゲシュタルト療法:「今、ここ」での感情と行動の気づきを深め、自立(コンピテンス)と自己受容を促す。
📚 まとめ
| 用語 | 意味 | 関連人物/理論 |
| 自尊感情 | 自分に対する全体的・感情的な価値評価 | ジェームズ、コッパーマン |
| 肯定的自己評価 | 自分の価値を好意的に認める認知プロセス | 自尊感情の中核 |
| コンピテンス | 課題を遂行できる能力、有能感 | ジェームズの「成功」の側面 |
試験対策として、自尊感情が「自己効力感(能力の信念)」や「自己概念(客観的事実)」とどう異なるのかを明確に理解しておきましょう。



