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試験対策用語説明-ピアジェの認知発達理論-

SAIKORO

公認心理師及び臨床心理士試験、臨床心理士指定大学院受験を目指す人のための用語説明コーナーです。今回はピアジェの認知発達について解説していきます。

 ピアジェは、認知過程の発達を生物学的な基盤から検討していきました。また、認知の発達は外界の対象を自分のシェマに取り入れる同化と、外界の対象に合わせて自分のシェマを変えていく調節よってもたらされるとしました。そして、同化と調節を繰り返すことによって認識精度を高めることを均衡化と言います。ピアジェは、子どもは科学者の様に実験と観察を繰り返しながら自らの「知」を構成していくと主張しており、この均衡化の概念は、ピアジェの「発生的認識論」の根幹をなす考え方でありました。

 *シェマとは:ものごとを考えたり見たり、行動する時に繰り返される認知構造のことを言います。人は様々な経験を通してシェマを発達させていきます。新しい環境に出くわしたときには、すでに獲得したシェマを当てはめて同化したり、調節によって環境に適応しようとします。シェマは簡単に言うとその人の持つ「経験的知識」と考えても良いかもしれません。ちなみに、認知心理学のスキーマとシェマは同義です。

ピアジェの認知発達段階

 ピアジェは認知発達を4つ段階に分類しています。

1.感覚運動期:0~2歳

 見たり聞いたり触ったりといった感覚と運動によって外界と接触し、シェマを獲得していく段階です。生後18か月後には、目の前にものが見えていなくて、そのものは存在していると分かる「対象の永続性」が獲得されとしています。

 感覚運動期の特徴の一つとして、循環反応が挙げられます。これは、手に持ったおもちゃやスプーンなどを何度も落としてみるといった、乳児の繰り返し行動のことです。循環反応は以下の段階を経ます。

①第一次循環反応:たまたま興味を持った反応を繰り返す

②第二次循環反応:外界の対象に自ら働きかけた結果興味を持ち、その行動を繰り返す

③第三次循環反応:自分の働きかけ方によって、対象がどう変化するのかに興味を持ち、その行動を繰り返す

 また、感覚運動期(生後8カ月)には模倣行動の第一段階もみられるようになります。この時期の模倣は「手の運動と発声の模倣期」と言い、自分が見たり聞いたりできる、自分と相手の動作・発生を模倣できるようになります。その後、12カ月頃までには、相手の表情に自分の表情を近づけることができる「顔の模倣」ができるようになります。そして、18カ月頃からは、相手の動作を記憶し、後から模倣できる「延滞模倣」が可能となります。

2.前操作期:2~6歳

 言葉やイメージといった表象による思考が可能となります。また、ごっこ遊びが可能となります。この段階の認知特徴としては、以下の内容が挙げられます。

・自己中心性:他者視点でものごとを捉えることができず、自分自身の行為や視点を絶対的なものであるかのよう捉えること。ピアジェは「三つ山の課題」で実証。

・アニミズム:日生物にも人間のような思考や感情があると思うこと。

・人口論:自然物も人間が作ったと思い込むこと。

・心の理論:他者の感情や思考、意図など心的状態を理解できるようになること。「誤信念課題(サリーとアンの課題)」が有名。4歳頃になると誤信念課題は通過すると言われている。

 なお、前操作期は象徴的思考期と直感的思考期に分類されます。

象徴的思考期(2~4歳):目の前に無いものを思い出し、絵に描いたりすることができる時期。2~3歳の子供は、日常にける大人の様々な動作を真似したがる時期。3~4歳の子供は自己中心性を示しやすい。

直感的思考期(4~7歳):経験したことのない状況を説明する時、絵本のような空想ではなく理性を用いるようになる(具体的操作期の奔り)。しかし、まだ論理的な思考には至らない。

3.具体的操作期:7~12歳

 論理的な思考ができるようになります。しかし、抽象的なことや仮定についてはまだうまく考えることができず、具体的なものにのみ論理を当てはめることができます。この時期の認知発達的特長は以下の内容になります。

・保存の概念の獲得:「コップに入った水を背の低いコップに入れ替えても水の量は変化しない」といったような、対象の形や状態が変化しても、対象の数量や性質は変化しないことが理解できるようになる。

・脱中心化:自己の視点から知ものごとをみれなかった状態から脱して、多様な視点からものごとを捉えられるようになる。

4.形式的操作期:12歳以降

 抽象的な事柄に関する思考操作が可能になり、合理的・系統的に考えらえるようになります。自分で実際に体験していなくても説明や映像から具体低イメージを描けるようになったり、具体的な事象や時間の流れに捉われずものごとを広い視点で考えられるようになったり、これまでの知識や経験を応用して仮説を立て、結果を予測して行動するなどが可能となります。

子どもの道徳観

 ピアジェは、子どもの道徳観について2つの発達段階があるとしました。

他律的道徳観(5~9歳):他人の作ったルールや法律に従うことで、絶対に変えられないものと思っている。そして、そのルールを破ると厳しい罰を受けなければならないと信じている。行動の意図よりも結果を重視して善悪を判断することが特徴。

自律的道徳観(9~10歳):自分自身の中にあるルールに左右されるようになる。絶対的な善悪は存在しないことを理解し、他者視点からも考えられるようになる。

SAIKORO

ピアジェの認知発達理論は頻出問題です。発達段階の順番やその特徴についてしっかり把握しておきましょう。ちなみに、ピアジェは10歳の時に生物学の論文を書き上げるほど生物や進化に関して深い理解を持っていたようです。そんな彼が人間の発達にも興味を持つようになったのは必然なのかもしれませんね。