公認心理師及び臨床心理士試験、臨床心理士指定大学院受験を目指す人のための用語説明コーナーです。今回はコールバーグの道徳観に関する様々な研究について解説していきます。
コールバーグの道徳観
コールバーグの思想はピアジェの認知発達論の影響を受けています。コールバーグは、人間は道徳的価値観や規範をそのまま受け入れて内面化するのではなく、他者や社会との相互作用の中で自分なりに道徳観を作り、道徳的な決定を行うとしました。
また、道徳的な価値の捉え方や道徳的決定の仕方は発達レベルによって異なるとしています。道徳的発達段階は以下の3つの水準に分類されます。
・前慣習的水準(ステージ1、ステージ2)
・慣習的水準(ステージ3、ステージ4)
・後慣習的水準(ステージ5、ステージ6)
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道徳的発達の3つ水準と6ステージ
前慣習的水準
幼少期など本人の中に確立した道徳心が無い状態を指します。この水準では、自分が所属する春暖のルールや文化・規則に敏感になります。
ステージ1:罰と服従への志向
行動基準が「他人から罰を与えられるか否か」の段階です。自分では正しいことか悪いことか判断できないので、褒められる行為を繰り返し、怒られる行為をしなくなります。
ステージ2:道具主義的な相対主義的志向
「自分の利益を守れるか否か」が正しさの判断基準となる段階です。その行為をすることで、自分や自他の双方に利益を与えるか否かが判断基準になります。自分が欲しいものを得るために、間違った行為をしてしまうことにも繋がります。
慣習的水準
集団やグループに認められることが判断基準となる段階です。周囲や家族からの期待などに価値を見出し、応えようとします。
ステージ3:対人的同調・いい子志向
「他人から好かれるか否か」が行動基準となる段階です。周囲から「いい子」と思われるための行動が中心となります。
ステージ4:法と秩序志向
「周囲が定めたルールを守れているか否か」が判断基準となる段階です。集団での秩序やルールを守ることに頑なになる段階です。
後慣習水準
個人の価値観や道徳観・倫理観が構築される段階です。これまでの段階を経て自分で善悪や正誤を判断し始めます。
ステージ5:社会契約的な法律志向
「合理的に定められたルールか否か」が判断基準となる段階です。自己利益だけでなく、他人や集団の利益も考えて行動できるようになり、その範疇で合理的に定められたルールを守ろうとします。
ステージ6:普遍的な倫理的原理の志向
ルールや状況に捉われることなく、自身の良心をベースにルールの改変も視野に入れた行動をとることができます。
コールバーグの道徳観は第4回の公認心理師試験でも出題されていました。ピアジェも独自の道徳観を提唱していましたが、コールバーグの道徳観はそれをさらに精緻化しているように思えます。どちらも覚えておいて損はないでしょう。